おろち もりたまご 忍者ブログ
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【2024/11/23 06:55 】 |
おろち
(三成と幸村・OROCHI妄想SS)

オロチでは皆の記憶がどこまであるのだろうか。
昔書いたものを加筆修正しました。





高めの丘から眺める景色。

蒼い空と赤茶の大地が遠く続く。

地に思い出したように点在する荒れた建造物。

三国と呼ばれる過去の異国のものと、

自らが駆けた戦国の世のものと。

 

この景色を見るたび思った。

ここで人と会うたび思った。


記憶の靄の中で、悲しい違和感が広がる。


どうしても思い出せない記憶がある。

どうしても甦らない感情の熱がある。

 

 

 

「三成殿は…いつの、三成殿なのですか」


聡明なこの人なら、答えてくれるだろうか。

そう思って、つい口に出して問うてしまった。


先を往くその人の足が止まり、整った顔がこちらに向けられる。

唐突な言葉に、薄い色の瞳は見開かれていた。


じわりと、恐れと後悔が胸に湧く。

答えてくださるな、と瞬間思った。


「『いつ』とは、どういう意味だ」


鋭く、いつもの真摯な声音で返ってきた。

それに幾ばくか安堵して、躊躇われた先の言葉へ進める。


「三成殿が…私と知り合い、世が太閤の世になり、その先で…」

「俺の記憶がどこまであるのかを知りたいのなら、『最期まで』と答えよう」


どう言って良いかわからずに口篭っていると、それを遮って彼は答えを述べた。

その自分にとって酷い答えを、あまりに涼やかに穏やかに言うので、

先ほど湧いた後悔は、あっさりと霧散した。


「そう鮮明ではない…だから、詳しくは言えぬが」


お前も同じようなものだろう、と珍しく人に見せる微笑みさえ浮かべて言われる。

 

聞くのが恐ろしかった答え。

聞きたく無かった酷いもの。


渦巻く違和感に遣る瀬無さを覚えて。

 

「そう気に病むことも無い…今は、遠呂智の作ったこの世に居るのだから」

 

そんな自分のくだらない葛藤を、この人は何も無いように綺麗に跳ね除けた。

 

「三成殿はやはり、すばらしい方です」

「…幸村が気遣いすぎるだけだろう」


ふい、とまた歩みを進めて往くのに合わせ、歩き出す。


この人は関ヶ原で果て、自分はおそらく大阪に果てた。

聞く限りではあの戦乱の後、徳川の世になったという。



それに悲しみも憎しみも湧かないのが、


今となってはもう、どうでも良いことだと思えた。

 

 

 

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【2010/11/30 01:19 】 | その他 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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