ねえねえ三成、ちょっと聞いて欲しいんだけど。
大丈夫、俺から後で秀吉様には話通しとくし、とにかく愚痴聞いてよね。俺珍しく怒ってんの。
…そんなに怯えないで良いよ。官兵衛殿のことだから。
最近さ、官兵衛殿が部屋に篭りっきりで姿見せなかったでしょ?あれ、何やってたと思う?
薄暗い部屋で「誰も入れるな」って言いつけたきり、まともに食事も取らずに。
それを見かねた小姓の子に泣き付かれて、耐えかねた俺が無理やり押し入って、やっと部屋に通してもらったんだけど。
官兵衛殿を疎んでるそこらの馬鹿に押し付けられた仕事を、そのまま積み上げて誰に任せることなく一人で処理してんの!普段の業務と合わせで!なんて馬鹿な!ありえない!
…ああ、うっかり口悪くなっちゃった。ごめんね。
そんなの適当に流すなり人に分けるなりすれば良いものを。
まったく自己犠牲が過ぎるって言うか周りを頼らないって言うか…。
そういえば、三成もそういう所が似てるから気をつけなよ。
だいたいさ、官兵衛殿って優しすぎると思わない?
え?分かんない?
…まあ、見た目的にも言い方的にも、そうは見えないか。
官兵衛殿って第一印象悪いもんね。
あれは手段を選らばなすぎるのと、人心に疎いのがいけないと思うんだー。
いつも物騒な物言いだしね。まさに口が災いの元って感じ。
そのうち絶対口で失敗するよ、官兵衛殿。
俺が居ないときは代わりに気をつけてあげて…って、三成もだよね。こうして考えるとよく似てるなー。
うーん、色々話してたら何だかすっきりしてきたかも。
結局何が言いたかったかって、官兵衛殿の自己犠牲精神が腹立たしいってこと。
俺のこと頼ってくれても良いと思わない?両兵衛なんだよ?
心配なんだって何度言っても分かって貰えないし…。
三成からも言っといてよ。抱え込み過ぎないように、ってね。
じゃ、ありがと。良い具合に落ち着いたよ。
ふう…後は…さん達を片付けるだけだなー。
どうしたのだ。顔色が酷いが。
私のせいだと…?
…半兵衛が来たのか。それは……すまない。
私は自身で受けて消える火の粉なら、躊躇わず受け止める所存だ。
火種は私自身であるから、半兵衛や周囲の者に飛び火させる訳にもゆかぬ。
今回引き受けた仕事は私さえ引き受ければ私怨を含め、全てが収まる程度のものであった。
仕事量は数日集中すれば周囲の業務に支障なく終わると計算済みだ。
問題ないと判断しての行動であったのだが…。
卿には分かってもらえたか…これを半兵衛に伝えた途端、羅針盤を投げつけられたのだ…。
半兵衛や身近の者に心配をかけたのは、分かっている。以後気をつけよう。
…同じことがあれば、やはり私はこのやり方を選ぶがな。
だが私ばかりが、という訳ではない。
私からすれば、半兵衛の方が余程問題があるように思う。
あの天衣無縫な振る舞いの裏には、沈んだ厭世観が見える。
「寝て暮らせる世」とは聞こえは安穏としたものだが、考えてみよ。
それは半兵衛の心残りの無い世という解釈もできる。
あの振る舞いが、危うさが、近頃更に不安に思えるのだ。
…私らしくないか。そうかも知れぬな。話しすぎた。
あまりに理不尽な扱いを受けたのでな。流石に心に留め切れなかったようだ。
ところで、半兵衛はどちらへ向かった?
…そうか。その様子では手にかけるまではしないものの、大層暴れるであろうな。
済まなかった。後で改めて詫びよう。失礼する。
おお、頭でっかちー。
さっき白い軍師がすっげー怖い顔して歩いていったと思ったら、
めちゃくちゃやつれた感じの黒い軍師がそれを追っかけてたんだよ。
あれは何やってんだろうな?新しいグンリャク?ってやつかな?
何か爆発音とか聞こえてたけど…喧嘩か?まさかなー。
おい…お前顔色悪いぞ。大丈夫か?
何があったんだよ、三成…まさか、お化けでも見たか?だから軍師たちもおかしかったのか?なあ?
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